第57回 税理士試験 試験解答 相続税法

第57回 税理士試験 試験解答

※ご覧になりたい科目をクリックしてください

相続税法

第一問

問1
1 相続税の非課税

宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で一定の要件に該当するものが相続又は遺贈により取得した財産でその公益を目的とする事業の用に供することが確実なものは相続税の課税価格に算入しない。ただし、その財産を取得した者が取得した日から2年を経過した日において、その公益を目的とする事業の用に供していない場合においては相続税の課税価格に算入する。

2 延納

1) 延納の許可の取消し

  • ① 税務署長は、延納の許可を受けた者が次に掲げる事由に該当したときは、その許可を取り消すことができる。
    • イ ・延納税額(その税額に係る附帯税に相当する額を含む。)の滞納その他延納の条件に違反したとき
    • ロ・その者がその延納税額に係る担保につき担保の変更命令に応じなかったとき
  • ② 税務署長は、①の規定により延納の許可を取消した場合においては、その旨及びその理由を記載した書面により、これを納税義務者に通知する。

2) 特定の延納税額に係る物納

  • ① 税務署長は、延納の許可を受けた者について、その延納税額からその納期限が到来している分納税額を控除した残額(以下「特定物納対象税額」という。)を、変更された条件による延納によっても金銭で納付することを困難とする事由が生じた場合においては、その者の申請により、特定物納対象税額のうちその納付を困難とする金額として一定の額を限度として、物納の許可をすることができる。
  • ② 上記により物納(以下「特定物納」という。)の許可を受けようとする者は、その特定物納に係る相続税の申告期限の翌日から起算して10 年を経過する日までに、特定物納対象税額その他一定の事項を記載した申請書に物納手続関係書類を添付し、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

    ページTOPへ

3 物納

1) 物納の許可の取消し

税務署長は、物納の許可をする場合において、物納財産の性質その他の事情に照らして必要があると認めるときは、必要な限度においてその許可に条件を付すことができる。この場合においてその一定事項の履行を求めるときは、その条件に従って期限を定めて履行を求める旨その他一定事項を記載した書面により申請者に通知する。
税務署長は履行がない場合には、通知した日の翌日から起算して5 年を経過する日までに物納の許可を取消すことができる。

2) 物納の撤回

(1) 適用要件

  • ① 税務署長は、物納の許可をした不動産のうちに賃借権その他の不動産を使用する権利の目的となっている不動産がある場合
  • ② その物納の許可を受けた者が、その後物納に係る相続税を、金銭で一時に納付し、又は延納の許可を受けて納付することができることとなったとき
  • ③ その不動産については、その収納後においても、その物納の許可を受けた日から1年以内にされたその者の申請により、その物納の撤回を承認することができる。
  • ④ ただし、その不動産が換価されていたとき又は公用もしくは公共の用に供されており、もしくは供されることが確実であると見込まれるときは、この限りでない。

(2) 手続

① 申請手続
物納の撤回を申請をしょうとする者は、その承認を求めようとする理由その他一定の事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
② 承認又は却下
税務署長は、上記の申請があった場合においては、その申請者及びその申請に係る事項について物納の撤回の要件に該当するか否かの調査を行い、その調査に基づき、その申請書の提出があった日の翌日から起算して3月以内にその申請の承認をし、又はその申請の却下をする。
なお、税務署長は、その承認をし、又は却下をした場合には、書面によりこれをその申請者に通知する。
また、その期間内に税務署長がその承認又は却下をしない場合には、その撤回の承認があったものとみなす。

(3) 物納の撤回による延納

① 適用要件
税務署長は、物納の許可を受けた者が物納の撤回の承認を受けようとする場合において、その物納の許可を受けた者の申請により、その撤回に係る相続税額につき、その相続税額のうち金銭で一時に納付することを困難とする金額として一定の額を限度として、延納の許可をすることができる。
② 申請手続
上記の延納を申請しょうとする者は、物納の撤回の申請者の提出と同時に、その撤回に係る相続税額その他一定の事項を記載した申請書に担保の提供関係書類を添付し、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
③ 許可又は却下
税務署長は、上記の申請書の提出があった場合においては、その申請の基因となる物納の撤回の申請の却下をする場合を除き、その申請者及びその申請に係る事項について物納の撤回に係る延納の要件に該当するか否かの調査を行い、その調査に基づき、その申請書の提出期限の翌日から起算して3 月(その調査に3 月を超える期間を要すると認めるときは6 月)以内にその申請に係る税額の全部又は一部についてその申請に係る条件若しくはこれを変更した条件により物納の撤回に係る延納の許可をし、又はその申請の却下をする。
なお、税務署長は、その許可をし又は却下をした場合においては書面によりこれをその申請者に通知する。
また、その期間内に、税務署長がその許可又は却下をしない場合には、その申請に係る条件により延納の許可があったものとみなす。
④ 税務署長の通知
税務署長は、物納の撤回を承認する場合において、その物納の撤回に係る相続税のうちに金銭で一時に納付すべき相続税があるときは、あらかじめ、その物納の撤回を申請した者に、一時に納付すべき相続税の額を通知しなければならない。
この場合において、その物納の撤回を申請した者がその通知書が発せられた日から1月以内にその通知に係る相続税を完納しないときは、その者は、物納の撤回の申請を取り下げたものとみなす。

ページTOPへ

4 農地等の相続税の納税猶予

1) 農地等の相続税の納税猶予の適用を受けている場合において、納税猶予期限前に次の事実が生じたとき

  • ① 納税猶予額の全部について猶予期限が確定する場合
    農業相続人が次に掲げる事由のいずれかに該当することとなった場合には、それぞれに定める日から2月を経過する日まで納税を猶予する。
    • イ、特例農地等の面積の100 分の20 を超える部分を譲渡等(収用交換等を除く。)をした場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・譲渡等をした日
    • ロ、農業経営を廃止した場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・廃止の日
    • ハ、継続届出書の提出がなかった場合・・・・・・・・・届出書の提出期限の翌日
  • ② 納税猶予額の一部について猶予期限が確定する場合
    農業相続人が次に掲げる事由のいずれかに該当することとなった場合には、納税猶予分の相続税の額のうち一定の相続税については、それぞれに定める日の翌日から2月を経過する日をもって納税の猶予に係る期限とする。
    • イ、特例農地等の面積の100 分の20 以下の部分を譲渡等した場合・・・譲渡等をした日
    • ロ、特例農地等につき、収用交換等による譲渡等をした場合・・・・譲渡等をした日
    • ハ、相続税の申告書の提出期限後10 年を経過する日において農業相続人の農業の用に供されていない準農地がある場合・・・・10 年を経過する日
    • ニ、納税猶予の適用を受ける農地又は採草放牧地が都市営農農地等である場合において、その都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があったとき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・買取りの申出のあった日

2) 利子税の納付

農業相続人は、上記に掲げる事由に該当する場合には、相続税の申告書の提出期限の翌日から納税猶予期限までの期間の月数に応じ一定の割合を乗じて計算した金額に相当する利子税を相続税にあわせて納付しなければならない。

ページTOPへ

5 特定事業用資産の減額

特定事業用資産の相続税の課税価格の計算の特例(特定森林施業計画対象山林又は特定受贈森林施行計画対象山林の部分に限る。)の規定は、税務署長がやむを得ない事情があると認めるときを除き、この規定の適用をうけようとする者の相続税の期限内申告書の提出期限から2月以内に森林施業計画に基づき施行が行われていた旨その他の事項を証する一定の書類の提出がない場合には、適用しない。

ページTOPへ

問2
1 死亡した子A の贈与税

贈与により財産を取得した者(以下1において「被相続人」という。)が相続時精算課税の規定の適用を受けることができる場合に相続時精算課税選択届出書の提出期限前にその届出書を提出しないで死亡したときは、その被相続人の相続人(包括受遺者を含み、その贈与をした者を除く。)は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10 月以内に、その届出書をその被相続人の納税地の所轄税務署に共同して提出することができる。

1) 子A の死亡に係る相続税―相続税の期限内申告

(1) 本来の提出義務者
相続又は遺贈(その相続に係る被相続人からの相続時精算課税適用財産に係る贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した者及びその被相続人に係る相続時精算課税適用者は、その被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格に係る相続税額(配偶者に対する相続税額の軽減の規定の適用がないものとして計算した金額)があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10 月以内に課税価格、相続税額その他一定の事項を記載した期限内申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
(2) 提出義務の承継者
期限内申告書を提出すべき者がその申告書の提出期限前にその申告書を提出しないで死亡した場合には、その者の相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10 月以内に、その死亡した者に係る期限内申告書をその死亡した者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
(3) 納 付
期限内申告書を提出した者は、その申告書の提出期限までに、その申告書に記載した相続税額に相当する相続税を国に納付しなければならない。

2) 父X の死亡に係る相続税

(1) 相続税の期限内申告

① 本来の提出義務者
相続又は遺贈(その相続に係る被相続人からの相続時精算課税適用財産に係る贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した者及びその被相続人に係る相続時精算課税適用者は、その被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格に係る相続税額(配偶者に対する相続税額の軽減の規定の適用がないものとして計算した金額)があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10 月以内に課税価格、相続税額その他一定の事項を記載した期限内申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
② 納 付
期限内申告書を提出した者は、その申告書の提出期限までに、その申告書に記載した相続税額に相当する相続税を国に納付しなければならない。

(2) 特定贈与者の死亡以前に死亡した場合

特定贈与者の死亡以前に相続時精算課税適用者が死亡した場合には、その相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)は、その相続時精算課税適用者が有していた納税に係る権利又は義務を承継する。ただし、その相続人のうちにその特定贈与者がある場合には、その特定贈与者は、その納税に係る権利又は義務についてはこれを承継しない。

ページTOPへ

第二問

1 相続人等の相続税の課税価格の計算
(1)遺贈により取得した個々の財産(次の(2)、(3)及び(6)に該当する者を除く。)の価額の計算

(単位:円)

財産の
種類
計算過程 取 得 者 課税価格に
算入される金額
宅地Gの
X 部分
間口距離( 7 . 2 ) m 、奥行距離( 2 5 ) m
5 0 0 , 0 0 0 * 1 × 1 . 0 0 × 0 . 9 9 * 2 × 1 8 0 ㎡ =89,100,000解答
解答
解答
解答
内縁の妻戌
子F
44,550,000
44,550,000
家屋H 20,000,000×1.0=20,000,000 内縁の妻戌 20,000,000
宅地I 間口距離(12)m、奥行距離(11.75)m
(1)100,000×0.99*1×0.98*2×141 ㎡=13.679.820
解答
解答
14m×12m=168 ㎡
(2) (1)×(1-0.7×0.3)=10,807,057
内縁の妻戌 10,807,057
家屋J 7,000,000×1.0×(1-0.3)=4,900,000
家屋Jの附属設備は、家屋の評価額に含まれているため評価しない。
K社株式
(2)1,330(3)1,370(4)1,330 最低額∴1,320
1,320×20,000 株=2,640,000
養子C 26,400,000
L 社株式 (1) 3,000
(2) ① ( 800,000,000 - 389,000,000 ) ―(750,000,000-389,000,000)
=50,000,000
(注)730,000,000+70,000,000=8,000,000,000
334,800,000+50,000,000+(70,000,000-10,000,000-50,000,000)
×42%=389,000,000
690,000,000 + 70,000,000 - 10,000,000 =75,000,000
② ①×42%=21,000,000
③ 800,000,000 - 389,000,000 - ② =390,000,000
解答
(3) (1)<(2)∴3,000
解答
3,000×0.6+13,000×(1-0.6)=7,000
7,000×20,000 株=140,000,000
子 E 140,000,000
M社
株式会社

解答
解答
50,000,000÷50=1,000,000 株
解答
解答
(ハ) (イ)=(ロ) ∴0
解答
解答
(3) (1)>(2)∴810
810×5,000 株=4,050,000
養子C 4,050,000
Nゴルフ会員権 8,000,000×70%=5,600,000 子E 5,600,000

ページTOPへ

(2) 相続又は遺贈によるみなし取得財産(相続時精算課税の適用を受ける贈与財産を除く。)価額の計算

(単位:円)

財産の種類 計算過程 取 得 者 課税価格に
算入される金額
生命保険金等 50,000,000-20,000,000*=30,000,000
* 生命保険金等の非課税金額
養子D 5,000,000×4(法定相続人の数)=20,000,000<50,000,000
∴20,000,000
配偶者乙 相続人でないため適用なし。

配偶者乙
養子D

100,000,000
30,000,000

退職手当金等 50,000,000+0*=50,000,000
*5,000,000-1,000,000×6<0 ∴0
退職手当金等の非課税金額
内縁の妻戌 相続人でないため適用なし。
内縁の妻戌 50,000,000
生命保険契約
に関する権利
  内縁の妻戌 18,000,000

ページTOPへ

(3)相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額の計算

(単位:円)

贈与年分 受贈者 財産の
種類
計算過程 課税価格に
算入される金額
平成17 年分 子E L社株式   68,000,000
平成19 年分 子E 宅地GのY部分 530,000 × 1.00 × 0.99* × 180 ㎡ =94,446,000
使用貸借のため自用地評価
94,446,000

ページTOPへ

(4)小規模宅地等の特例及び特定事業用資産の特例の計算

計算過程 (単位:円)

  • (1) 44,550,000÷90 ㎡×80%×240 ㎡=95,040,000  
    10,807,057÷141 ㎡×50%×200 ㎡=7,664,579
    138,000,000×10%=13,800,000
    6,800×10,000 株=68,000,000 
    7,000×10,000 株=70,000,000 
    68,000,000+70,000,000=138,000,000<1,000,000,000 ∴138,000,000
  • (2) 44,550,000×80%=35,640,000 90 ㎡+90 ㎡=180 ㎡<240 ㎡

    68,000,000>34,500,000     
    ∴34,500,000  34,500,000×10%=3,450,000
特例適用対象財産 取得者 課税価格から減額される金額
宅地G のX 部分 内縁の妻戌 △35,640,000
宅地G のX 部分 子F △35,640,000
L 社株式 子E △ 3,450,000

ページTOPへ

(5) 課税価格から控除すべき債務及び葬式費用の計算
債務及び
葬式費用
負担者 計算過程 金額
債務 子E 300,000+200,000+1,000,000=1,500,000
遺言の執行費用は控除できない。
△1,500,000
葬式費用 内縁の妻戌
子E
香典返しの費用、初七日の法事の費用は控除できない。
香典は贈与税の非課税
相続人・包括受遺者でないため適用なし。

△ 2,500,000

ページTOPへ

(6) 課税価格に加算する贈与財産(暦年贈与財産)価額の計算
贈与年分 受贈者 計算過程 加算される贈与財産価額
平成16 年分 配偶者乙 現金 100,000,000
平成18 年分 子 F 現金 20,000,000
(7) 相続人等の課税価格の計算

解答

ページTOPへ

2 納付すべき相続税額の計算
(1) 相続税の総額の計算

解答

(2) 相続人等の納付すべき相続税額の計算

解答

ページTOPへ

(3) 相続税額の2割加算金額及び控除金額の計算

(単位:円)

加算及び
控除の項目
対象者 計算過程 金額
2割
加算金額
内縁の妻戌 5,845,627
贈与税額
控除額
配偶者乙 (100,000,000-1,100,000)×50%-2,250,000=47,200,000 △ 47,200,000
子 F (20,000,000-1,100,000)×50%-2,250,000=7,200,000 △ 7,200,000
配偶者の
税額軽減額
配偶者乙 (1)51,907,147-47,200,000=4,707,147
(2)

∴351,286,500
② 200,000,000
③ ①>② ∴200,000,000
(3) (1)≦(2) ∴4,707,147
△ 4,707,147
未成年者
控除額
子 F 60,000×(20 歳―16 歳)=240,000 △ 240,000
相続時
精算課税に
おける
贈与税額の
控除額
子 E (1)平成17 年分(68,000,000-25,000,000*)×20%=8,600,000
*68,000,000>25,000,000 ∴ 25,000,000
(2)平成19 年分 相続開始年分の被相続人からの贈与のため適用なし
(3) (1)+(2)=8,600,000
△8,600,000

ページTOPへ

上記解答について

※上記解答は独自に作成されたものであり、公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。

ページTOPへ