平成25年 公認会計士試験 論文式試験解答 民法
平成25年 公認会計士試験 論文式試験解答 民法
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民 法
第5問
問1
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AがBのために譲渡担保を設定した甲上に占有権原のないCが建設資材を運び込んで占拠していることから、AがCに対して建設資材の撤去を請求している。第1に、この請求は、所有権に基づく物権的請求権を根拠とすることが考えられる。物権的請求権については明文規定がないが、物権の直接支配性からその円満な支配状態を回復するために当然に認められていると考える。ししかし、Aは、Bのために甲に譲渡担保を設定していることから、これにより所有権はBに移転し、Aは所有権を失っているので、所有権による物権的請求権は行使できなくなっているのではないか。そこで、譲渡担保の法的構成が問題となる。
たしかに、当事者が質権や抵当権を設定しないで所有権譲渡という方式を選択したということは、譲渡担保によって目的物の所有権を内外ともに債権者に移転させる意思といえるから、所有権は担保権者に移転するともいえる。しかし、むしろ当事者の意思は担保の設定にあり、そのために便宜的に所有権移転という方式を利用しているにすぎない。そして、所有権の移転まで認めることは余剰の利益を担保権者に与えることになる反面で、設定者の保護に欠けることになる。
よって、譲渡担保権者は、目的物の所有権を取得しないで担保価値を把握するにすぎず、その残余価値は債務者に帰属していると考える。
よって、Bは甲の譲渡担保権を取得するにすぎず、その所有権は依然としてAに帰属しているので、Aは、所有権による物権的請求権に基づいて建設資材の撤去を請求することができる。
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第2に、Aは、占有保持の訴え(198条)に基づいて建設資材の撤去を請求することができる。譲渡渡担保契約後もAが引き続き甲を利用することで合意したことからAは甲に対する占有権を失っていないが、これをCが妨害しているからである。
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そして、Aは、所有権に基づく物権的請求権と占有保持の訴えのいずれかを選択して請求できると考える。2つの権利は別個の根拠に基づく別個の権利だからである。
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問2
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(1)について
債務全額と遅延利息の弁済が受けられればBには不利益はないので、Aは、債務不履行後も受戻権が認められると考える。しかし、すでにBは甲を譲渡している。それでもAは受戻権を行使できるか。受戻権が行使できるのはいつまでかが問題となる。
債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、債権者は、譲渡担保契約が帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず、目的物を処分する権能を取得するから、債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは、原則として、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し、債務者は、清算金がある場合に債権者に対してその支払いを求めることができるにとどまり、残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなるものと考える。そして、これは第三者が背信的悪意者であった場合でも異ならない。このように考えないと、権利関係の確定しない状態が続くばかりでなく、譲受人が背信的悪意者に当たるかどうかを確知しうる立場にあるとは限らない債権者に不測の損害を被らせるからである。
本問では、Bが甲をDに譲渡しているのでDは甲の所有権を確定的に取得し、Aの受戻権は消滅する。そして、DはBの親戚であり、甲に譲渡担保が設定されていることについて悪意であることから背信的悪意者であったとしても、結論は変わらない。
よって、Aは、甲の受戻しを求めることはできない。
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(2)について
Dから甲の明渡しを請求されたときにAがそれを拒むには、Aは甲を占有しているので、留置権(295条)を主張することが考えられる。留置権の成立には、①被担保債権と目的物の間に牽連関係があること、②被担保債権が弁済期にあること、③留置権者が「他人の物」を占有していること、④占有が不法行為によって始まったものでないこと、が必要である。
甲の受戻しが認められない場合には、BがDに甲を譲渡した時点で、AはBに対して4,000万円の清算金請求権を取得するし、甲の所有権はDに移転する。よって、①この清算金請求権は甲から生じているため、甲との間に牽連関係があるし、②弁済期も到来しており、③Aは「他人の物」を占有していることになる。そして、④Aの占有が不法行為によって始まったという事実もない。
以上から、Aは、甲を留置できるので、清算金の支払いを受けるまではDの明渡請求に応じなくてよい。
第6問
問1
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AとDの優劣の基準
本件債権は、Aによって差し押さえられて差押命令がCに送達されているが、他方で、本件債権はDに譲渡されて確定日付ある証書により債権譲渡の通知がCに到達しており、AとDいずれも対抗要件を備えている(467条2項)。このような場合を想定した規定はないため、467条の趣旨に照らしてAとDの優劣を決定する基準を定めるほかない。
467条1項は、債権譲渡の事実につき債務者の認識を通して公示機能を果たさせる趣旨である。とすれば、債務者が認識できる状態に至った時、すなわち、通知が債務者に到達した時に公示機能が果たせるようになる。そして、467条2項は確定日付を要求しているが、これは日付の操作を防止するためにすぎず、467条1項の構造を変えるものではない。したがって、到達の先後を基準とすべきである(到達時説)。
本問では、確定日付ある証書による債権譲渡の通知が裁判所の差押命令よりも先にCに到達しているので、DがAに優先する。
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AとCの法律関係
DがAとの関係で優先して本件債権の唯一の債権者となっている以上、Aは、Cに対して100万円の弁済を請求することができず、Cはこれを拒むことができる。
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CとDの法律関係
本件債権の債権者はDであるから、Dは、Cに対して100万円の弁済を請求することができ、Cはこれを拒むことができない。
問2
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AとDの法律関係
債権差押命令がCに送達された日時と、債権譲渡通知がCに到達した日時の先後が不明である場合には、到達時の先後によってもAとDの優劣を決定することはできない。そこで、このような場合の両者の関係をどのように決定すべきかが問題となる。
両者とも対抗要件を備えており、かつその優劣を決定することはできない以上、両者が互いに自己が優先的地位にあることを主張できないと考えるほかない。そうだとすると、債務者が債権額を供託した場合に供託金額が両債権額の合計に足りないときは、公平の観点から、各譲受人は債権額に応じて供託金額を按分した額の供託金還付請求権を分割取得すると考える。
以上から、Aによる差押債権額は100万円、Dによる譲受債権額は100万円であるから、供託金額100万円を按分した額として、それぞれ50万円の供託金還付請求権を取得する。よって、100万円の供託金還付請求権を有するというAの主張は認められない。
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AとCの法律関係
債権差押命令がCに送達された日時と、債権譲渡通知がCに到達した日時の先後は不明であることから、債権者不確知を理由にしたCの供託は適法である(494条)ため、Cの債務は消滅している。よって、Aは、Cに弁済を請求することはできない。
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CとDの法律関係
AとCの法律関係におけるのと同様の理由により、Dは、Cに弁済を請求することはできない。
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上記解答について
※上記解答は独自に作成されたものであり、「公認会計士・監査審査会」が公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。
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