招集通知は、各株主に株主総会への出席と準備の機会を与えるためにある。そこで、(1)株主の全員の同意がある場合は、招集通知を省略して株主総会を開催しても適法に決議できる(300条)。又、(2)株主の全員が出席し、異議を述べることなく決議がなされた場合も、適法であると考えられる(全員出席総会)。
一部の株主に招集通知が発せられなかったことは、招集の手続が法令(299条1項)に違反するとき(831条1項1号)に該当するから、決議取消原因となる。そこで、株主等が決議の日から3箇月以内に訴えをもって当該決議の取消しを請求し(831条1項柱書)、それを認容する判決が確定すると、当該決議は遡及的に無効となる(839条の反対解釈)。
もっとも、招集の手続が法令に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないと認めるときは、請求を棄却することができる(裁量棄却。831条2項)。そこで、裁量棄却がなされたときは、当該決議は無効とならないが、招集通知の漏れは、株主が経営に参加する機会を奪う重大な瑕疵であるから、基本的に裁量棄却できないと考える。
一部の取締役に招集通知が発せられずに開催された取締役会の決議には、招集手続の法令(368条1項)違反という手続上の瑕疵があることなる。では、当該決議の効力はどうなるか。この点、株主総会の場合と違って明文の規定がないから、一般原則に従って無効と考えざるをえないが、一方で、どのような瑕疵であっても無効とすることは、業務執行の迅速性・安定性を害する。そこで、原則として無効であるが、決議の結果に影響を及ぼさない特段の事情があるときは有効であると考えるべきである。
事業の重要な一部を、事業譲渡によって承継させる場合、債務もD会社に承継させるには、C会社の債権者の個別の同意を要する。債務者の変更は、各債権者にとって重大な利害があるからである。しかし、吸収分割による場合は、官報公告かつ個別催告などの債権者保護手続を踏めばよく、異議を述べる債権者がいても、債権者を害するおそれがないときは、手続を進めることができる(789条)という違いがある。
又、会社債権者が事業譲渡の効力を争う場合、会社法上、特別な規定はないから、その主張方法に特に制限はない。しかし、吸収分割の効力を争う場合は、主張方法に制限が設けられている(6箇月以内に訴えもってのみ、吸収分割について承認をしなかった債権者に限定して主張できる。828条1項9号・2項9号)という違いがある。
※上記解答は独自に作成されたものであり、「公認会計士・監査審査会」が公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。