平成19年 公認会計士試験 論文式試験解答 民法

平成24年 公認会計士試験 論文式試験解答 民法

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民 法

第5問

問1
 第1に、Aが丁部分を自主占有しており、Bが相続によりAの占有権を承継しているため、2012年7月に時効取得(民法187条、162条1項)している。そこで、Cは、Bの時効取得を援用(同法145条)して、Bが丁部分の所有権を遡及的に取得しているから、自己も丁部分につき賃借権を取得している、と主張することが考えられる。これに対して、Eは、一筆の土地の一部につき時効取得は成立しないし、成立するとしても、時効は自己が譲り受けた後に完成しているから、自己には登記なくして対抗できない(同法177条)と、反論することが考えられる。
 おもうに、できるだけ継続した事実状態を尊重するという時効の趣旨から、一筆の土地の一部であっても時効取得は成立すると考える。しかし、時効取得者にとって時効完成後の第三者は、登記なくして対抗できない同法177条の「第三者」に該当すると考える。なぜなら、時効完成により原所有者から時効取得者への実質的な所有権の移転があり、その後の原所有者からの第三者への譲渡に着目すれば、二重譲渡に類似する状況にあるし、時効完成後ならば登記は可能であり、それにもかかわらず時効取得者が登記を怠ったのであれば、不利益を受けてもやむをえないからである。よって、Bは、時効完成後に丙土地の登記を備えたEに対し、丁部分の賃借権を主張することができない。
 第2に、Cは、丁部分の賃借権の時効取得(同法163条、162条1項)を主張することが考えられる。これに対して、Eは、賃借権の時効取得は認められていないこと、これが認められるとしても、敷地として登記されていない丁部分の賃借権は対抗要件(借地借家法10条1項)を備えていないため、時効完成後に丙土地を譲り受けたEには、丁部分の賃借権の時効取得を対抗できないと、反論することが考えられる。
 おもうに、土地の賃借権は債権であるが、土地の継続的利用という点で地上権に類似するから、不動産の賃借権の時効取得も認められるべきである。ただし、原所有者の時効中断の機会を保障するため、①土地の継続的利用という外形的事実が存在し、②それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されている場合に限るべきである。そうすると、Cは乙建物を建築して居住しているから①が認められるし、A・Bに継続して賃料を支払っているから②も認められるので、Cは、丁部分の賃借権を時効取得できる。そして、たしかにCの賃借権は対抗要件に不備があるが、Eは、不動産業者であり、乙建物が長年利用されており、トラブルもなかったことを告げられていたことからすると、Cによる時効取得の可能性を知ることができたはずであるから、EがCの対抗要件の不備を主張することは権利濫用(同法1条3項)と考える。
 よって、Cは、Eに対し、賃借権の時効取得を主張することができる。

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問2
 Bは、Aに無断でAを代理して抵当権の設定および連帯保証契約をしているから、無権代理であり、無効である(民法113条1項)。よって、Gは、甲土地の抵当権を取得することができないし、B・Hに連帯保証債務の履行を請求することもできないのが原則である。
 しかし、その後にAが死亡して、無権代理人BがHとともに本人Aを共同で相続している(同法896条、899条)。そこで、無権代理人が本人を共同相続した場合の無権代理行為の効力が問題となる。
 たしかに、相続により、本人が自ら法律行為をしたのと同じ効力を生じるとして、無権代理行為は当然に有効となるとも考えられる。しかし、相続という偶然の事情により無権代理行為の相手方の取消権等の権利(同法115条、117条)を奪うべきではない。そこで、本人から相続した地位と無権代理人の地位を無権代理人に併存させたうえで、無権代理人の追認権は、その性質上、共同相続人に不可分的に帰属するから、共同相続人全員が追認しない限り、追認の効果は生じない。そして、無権代理人の追認拒絶は信義則(同法1条2項)には違反するのに対して、他の相続人の追認拒絶は信義則に違反しないので、他の共同相続人が追認しない限り、追認の効果は生じないので、無権代理人の無権代理行為は相続によって当然に有効となるものではないと考える。
 以上から、Hが追認した場合、Gは、甲土地の抵当権を取得することができるし、B・Hに連帯保証債務の履行を請求することができる。これに対して、Hが追認を拒絶した場合、Gは、甲土地の抵当権を取得することができないし、B・Hに連帯保証債務の履行を請求することもできないので、無権代理人としての責任(同法117条)をBに追及するほかない。この場合、連帯保証契約については、その履行または損害賠償を選択して請求することができるが、抵当権については、損害賠償を請求するしかない。

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上記解答について

※上記解答は独自に作成されたものであり、「公認会計士・監査審査会」が公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。

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