第58回 税理士試験 試験解答 相続税法

第58回 税理士試験 試験解答

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相続税法

第一問

問1
1 特定贈与財産についての生前贈与加算の不適用

相続又は遺贈により財産を取得した者がその相続の開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、その贈与により取得した財産(その価額がその取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの(特定贈与財産及び相続時精算課税適用財産を除く。)に限る。)の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなす。
なお、特定贈与財産とは、贈与税の配偶者控除に規定する婚姻期間が20 年以上である配偶者に該当する被相続人からの贈与によりその被相続人の配偶者が取得した贈与税の配偶者控除に規定する居住用不動産又は金銭でその取得の日の属する年分の贈与税につき贈与税の配偶者控除の規定の適用を受けた又は受ける見込みである部分をいう

2 小規模宅地等の相続税の計算の特例

個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、その相続開始の直前において、その相続もしくは遺贈に係る被相続人又はその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」という。)の事業(事業に準ずるものとして一定のものを含む。以下同じ。)の用又は居住の用に供されていた宅地等で一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているもので一定のもの(以下「特例対象宅地等」という。)がある場合、その相続又は遺贈により財産を取得した者に係るすべての特例対象宅地等のうち、その個人が取得した特例対象宅地等又はその一部でこの規定の適用を受けるものとして一定の方法により選択したもの(以下「選択特例対象宅地等」という。)については、限度面積要件を満たす場合のその選択特例対象宅地等(以下「小規模宅地等」という。)に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額は、その小規模宅地等の価額に次に掲げる小規模宅地等の区分に応じそれぞれに定める割合を乗じて計算した金額とする。

  • ① 特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等 100分の20
  • ② ①以外の小規模宅地等・・・・・・100 分の50
3 特定事業用資産の相続税の課税価格の計算の特例

特定事業用資産相続人等が、相続又は遺贈(その相続に係る被相続人からの相続時 精算課税適用財産に係る贈与を含む。)により取得した特定事業用資産でこの規定の適用を受けるものとして一定の方法により選択したもの(以下「選択特定事業用資産」という。)について、その相続開始の時から相続税の期限内申告書又は義務的修正申告書の提出期限(その特定事業用資産相続人等がその提出期限の前に死亡した場合には、その死亡の日。)まで引き続きその選択特定事業用資産のすべてを有している場合その他これに準ずる一定の場合は、相続税の課税価格(相続時精算課税適用財産がある場合には、その財産の価額を加算した価額)に算入すべき価額はその選択特定事業用資産の価額に次に掲げる選択特定事業用資産の区分に応じそれぞれに定める割合を乗じて計算した金額とする。

  • ① 特定同族会社株式等又は特定受贈同族会社株式等である選択特定事業用資産・・・・100 分の90
  • ② 特定森林施業計画対象山林又は特定受贈森林施業計画対象山林である選択特定事業用資産・・・・100 分の95
4 国等に相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税

相続又は遺贈により財産を取得した者が、その取得した財産をその取得後その相続又は遺贈に係る相続税の期限内申告書(この申告書の提出後において相続財産法人からの財産分与により取得した財産については、義務的修正申告書)の提出期限までに国もしくは地方公共団体又は特定の公益法人等に贈与した場合には、その贈与によりその贈与をした者又はその親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除き、その贈与した財産の価額は相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない。

5 申告期限前に災害による被害を受けた場合の相続税の課税価格の計算

相続税の納税義務者で災害により相続又は遺贈により取得した財産について相続税の期限内申告書の提出期限前に甚大な災害を受けたものの納付すべき相続税については、その財産の価額は、被害を受けた部分の価額を控除した金額により、これを計算する。

問2
(1) 乙(子)に対する課税関係
  1. 贈与税の納税義務を負う場合
    贈与により財産を取得した日本国籍を有する個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有しないもの(その個人又はその贈与者がその贈与前5年以内のいずれかの時において法施行地に住所を有していたことがある場合に限る。)は、相続税法により、贈与税を納める義務がある。
  2. 贈与税の課税財産の範囲
    その者が贈与により取得した財産の全部に対し、贈与税を課する。
  3. 贈与税の課税価格
    その年中において贈与により取得した財産の価額の合計額をもって、贈与税の課税価格とする。
  4. 受益者等の存する信託に対する課税(効力発生時)
    信託 (退職年金の支給を目的とする信託その他の信託で一定のものを除く。以下同じ。)の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずにその信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者及び特定委託者をいう。以下同じ。)となる者があるときは、その信託の効力が生じた時において、その信託の受益者等となる者は、その信託に関する権利をその信託の委託者から贈与(その委託者の死亡に基因してその信託の効力が生じた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
  5. 信託財産に属する資産及び負債の承継等
    4の規定により贈与又は遺贈により取得したものとみなされる信託に関する権利又は利益を取得した者は、その信託の信託財産に属する資産及び負債を取得し、又は承継したものとみなす。
(2) 乙(子)の死亡に伴う丙(乙の子)に対する課税関係
  1. 相続税の納税義務を負う場合
    相続又は遺贈により法施行地にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有しないもの(相続税の非居住無制限納税義務者を除く。)は、相続税法により、相続税を納める義務がある。
  2. 相続税の課税財産の範囲
    その者が相続又は遺贈により取得した財産で法施行地にあるものに対し、相続税を課する。
  3. 相続税の課税価格
    その相続又は遺贈により取得した財産で法施行地にあるものの価額の合計額をもって、相続税の課税価格とする。
  4. 受益者等の存する信託に対する課税(受益者等の変更時)
    受益者等の存する信託について、適正な対価を負担せずに新たにその信託の受益 者等が存するに至った場合(一定の場合を除く。)には、その受益者等が存するに至った時において、その信託の受益者等となる者は、その信託に関する権利をその信託の受益者等であった者から、遺贈により取得したものとみなす。
  5. 信託財産に属する資産及び負債の承継等
    上記 (1)5と同様であるため、省略。

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第二問

1 相続人等の相続税の課税価格の計算
(1) 遺贈により取得した個々の財産(次の(2)及び(5)に該当する者を除く。)の価額の計算

(単位:円)

財産の
種類
計算過程 取 得 者 課税価格に
算入される金額
家屋J (1)55,000,000×1.0×100 ㎡ /200 ㎡×(1-30%)=19,250,000
(2) 55,000,000×1.0×100 ㎡ /200 ㎡=27,500,000
(3)((1)+(2))×1/2=
配偶者乙 23,375,000
宅地K 間口距離(15)m、奥行距離(10)m
(1)(1,500,000×0.98+950,000×1.00×0.10)×150 ㎡=234,750,000 (2)(1) ×75 ㎡※/150 ㎡×(1-70%×30%) =92,726,250
(3)(1) ×75 ㎡※/150 ㎡=117,375,000
(4)(2)+(3)=
※150 ㎡×100 ㎡/200 ㎡=75 ㎡
配偶者乙 210,101,250
宅地L 間口距離(10)m、奥行距離(20)m
(1) 250,000×1.00×0.85※×200 ㎡=42,500,000
※80 ㎡/200 ㎡=0.4≧0.4、方位南 ∴0.85
(2)(1) ×120 ㎡※/ 200 ㎡×(1-70%×30%)=20,145,000
※200 ㎡×90 ㎡/150 ㎡=120 ㎡
(3)(1) ×80 ㎡/200 ㎡=17,000,000
※200 ㎡×60 ㎡/150 ㎡=80 ㎡
(4)(2)+(3)=
養子D´ 37,145,000
家屋M (1) 25,000,000×1.0×90 ㎡/150 ㎡×(1-30%) =10,500,000
(2) 25,000,000×1.0×60 ㎡/150 ㎡=10,000,000
(3)((1)+(2)) ×1/2 =
子D
養子D´
10,250,000
10,250,000
N社株式 評価方式の判定
(500 個(D')+50 個(D))/600 個=91.66…%> 50%≧25%
∴養子D’は、同族株主に該当し、かつ、中心的な 同族株主に該当するため、原則的評価方式
(1)類似業種比準価額 1株当たりの資本金等の額を50 円とした場合の株数 30,000,000÷50=600,000 株
(B) (1,750,000+1,750,000)×1/2÷600,000 株=2.9 (10 銭未満切捨) (C) 75,000,000>(75,000,000+70,000,000)×1/2 =72,500,000 72,500,000÷600,000 株=120(円未満切捨)
( D) 85,000,000÷600,000 株=141(円未満切捨)

①中分類(電気設備工事業)

591.8×500/50=5,918
※411<427<436<459 ∴411
②大分類(建設業)

424.8×500/50=4,428
※354<401<414<422 ∴ 354
③①>②∴4,2481
※2小数点以下2位未満切捨

(2)純資産価額 ①301,200,000※-55,800,000※2=245,400,000
※1 300,000,000-4,800,000+15,000,000×(1-60%)=301,200,0001
※2 20,000,000+35,000,000+5,000,000-700,000×6月=55,800,0001
②100,000,000-55,800,000※2=44,200,000
③(①-②)×42%=84,504,0001
④①-③=160,896,000
⑤④÷60,000 株=2,681(円未満切捨)

(3)評価額
2,681※×0.6+2,681×(1-0.6)=2,681
※4,248>2,681 ∴2,681
2,681×32,000 株=
養子D´ 85,792,000
不動産P 500,000 ドル×115.55×1/2=
制限納税義務者に該当するため、課税対象外
子F
夫F´
28,887,500
-
Q社株式 (1)東京 1,560< 1,562<1,581<1,643 ∴1,5601
(2)大阪 1,453<1,490<1,603<1,640 ∴1,4531
(3)(1)>(2) ∴1,453×20,000 株=
孫G 29,060,000
宅地I (390,000×1.00+400,000×0.96×0.03)×480 ㎡×1/4= 配偶者乙 48,182,400
生命保険契約に関する権利 配偶者乙 7,500,000
未収役員報酬 配偶者乙 700,000

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(2) 相続又は遺贈によるみなし取得財産の価額の計算

(単位:円)

財産の種類 計算過程 取 得 者 課税価格に
算入される金額
生命保険金 50,000,000- 5,000,000×6 人(法定相続人の数)=
T生命保険は被相続人甲が保険料を負担していないため、相続により取得したものとみなされる部分はない

養子D´
配偶者乙

20,000,000
-

退職手当金等 35,000,000+(5,000,000-700,000×6月)
-5,000,000×6 人(法定相続人の数)=
配偶者乙 5,800,000

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(3)小規模宅地等の特例及び特定事業用資産の特例の計算

(単位:円)

  • 乙 (特定居住用宅地等(貸付))
    92,726,250÷75 ㎡×80/100=989,080
    989,080×0.6=593,448
  • 乙 (特定居住用宅地等(自用))
    117,375,000÷75 ㎡×80/100=1,252,000
    1,252,000×0.6=751,200
  • D´(特定同族会社事業用宅地等)
    20,145,000÷120 ㎡×80/100=134,300
  • D´(特定同族会社株式等)
    107,240,000※×10/100=10,724,000
    10,724,000÷400 ㎡=26,810
    ※ 60,000 株×2/3×2,681=107,240,000≦1,000,000,000 ∴107,240,000
    ∴乙(特定居住用宅地等(自用))から75 ㎡ 乙(特定居住用宅地等(貸付))から 75 ㎡
  • D´(特定同族会社事業用宅地等)から120 ㎡(400 ㎡-(75 ㎡+75 ㎡)×400 ㎡/240 ㎡) 及びD´(特定同族会社株式等)から30 ㎡分(400 ㎡-(75 ㎡+75 ㎡)×400 ㎡/240 ㎡-120 ㎡)
  • 乙 (特定居住用宅地等(自用))1,252,000×75 ㎡=93,900,000
  • 乙 (特定居住用宅地等(貸付)) 989,080×75 ㎡=74,181,000
  • D´(特定同族会社事業用宅地等)134,300×120 ㎡=16,116,000
  • D´(特定同族会社株式等) 26,810×30=804,300
特例適用対象財産 取得者 課税価格から減額される金額
宅地K 配偶者乙 168,081,000
宅地L 養子D´ 16,116,000
N社株式 養子D´ 804,300

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(4) 課税価格から控除すべき債務及び葬式費用

(単位:円)

債務及び
葬式費用
負担者 計算過程 金額
債務 配偶者乙 750,000+400,000+1,500,000= 2,650,000
葬式費用 子D
養子D´
6,000,000×1/2= 3,000,000
3,000,000

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(5) 課税価格に加算する贈与財産(暦年贈与財産)価額の計算

(単位:円)

贈与年分 受贈者 計算過程 加算される贈与財産価額
平成20年 子D 150,000,000-60,000,000※=90,000,000
※150,000,000>60,000,000 ∴60,000,000
90,000,000
平成17年 孫H 相続又は遺贈により財産を取得していないため、 適用なし。 -
平成18年 子F 25,000,000
平成19年 配偶者乙 27,500,000-20,000,000※=7,500,000
※27,500,000≧20,000,000 ∴20,000,000
7,500,000
(6) 相続人等の課税価格の計算

(単位:円)

解答

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2 納付すべき相続税額の計算
(1) 相続税の総額の計算
解答
法定相続人及び法定相続分
(2) 相続人等の納付すべき相続税額の計算

(単位:円)

解答

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(3) 相続税額の2割加算金額及び控除金額の計算

(単位:円)

加算及び
控除の項目
対象者 計算過程 金額
相続税額の
2割加算金額
孫G 4,866,306×20/100= 973,261
贈与税額
控除額
(暦年課税分)
子D 相続開始年分の被相続人からの贈与は、贈与税の非課税財産
子F (25,000,000-1,100, 000)×50%-2,250,000
=9,700,000>9,023,767 ∴9,023,767
9,023,767
配偶者乙 (27,500,000-20,000,000-1,100,000)×40%-1,250,000= 1,310,000
配偶者の
税額軽減額
(計算パターン2)
配偶者乙 (1)22,175,857-1,310,000=20,865,857
(2)
① 445,890,000×1/2=222,945,000
≧160,000,000 ∴222,945,000
20,865,857
②132,427,000
③①>② ∴132,427,000
(3)(1)≦(2)④ ∴20,865,857
20,865,857
未成年者
控除額
孫G 60,000×(20 歳-17 歳)=
H2.11.1~H 20.5. 12 →17 歳
180,000
障害者控除額 子D 120,000×(70 歳-40 歳)=
S43.3.3~H20.5. 12 →40 歳
3,6 00,000

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上記解答について

※上記解答は独自に作成されたものであり、公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。内容は変更する場合があります。

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