平成19年 公認会計士 試験 論文式試験解答

平成20年 公認会計士試験 論文式試験解答 監査論

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監査論

第1問

問題1

その理由は、財務諸表の重要な虚偽表示が、経営者レベルでの不正や経営者の関与によって発生する可能性が相対的に高くなってきたからである。経営者不正や、事業経営の状況を糊塗することを目的とした経営者の関与などは、内部統制の欠陥などの内部的な要因と、企業環境の変化や業界慣行等の外部的な要因が複合的に絡み合ってもたらされる場合が多い。したがってリスク評価対象を、内部統制を含む企業および企業環境にまで広げる必要があったことが理由であると考えられる。

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問題2
問1
識別すべき事業上のリスク
(財務諸表全体レベル)
生じる可能性のある虚偽の表示
(財務諸表項目レベル)
株式交換による企業買収に頼った業容大 株価を高めるための仕入債務の過小計上
技術革新の進行による生産設備の陳腐化 損失隠蔽のための減価償却費の過小計上
熾烈な受注競争による裏リベート等の支出 裏金隠しのための費用の不計上
経理部長に対するモニタリングの欠如 横領を看過したことによる現金の過大計上
急激な為替変動による先物為替予約の失敗 損失隠蔽のための為替差損の過小計上
財務制限条項を満たすための利益水増し 利益水増しための売上高の過大計上
問2

株式交換による大型の企業買収は、金額的にも質的にも重要な非定型取引であり、経営者の判断に強く依存している事項である。このようなものは、例えば企業価値や株価の評価など見積もりによる重要な測定上の不確実性が存在する。また資産や負債の時価、特にのれんの評価などについてもかなりの部分、経営者の主観による。情報収集や処理について定型化されない多数の作業が存在し、計算又は会計基準も複雑で、リスクに対する効果的な内部統制の導入が困難であり、かつ経営者に対しては機能しにくい。このような取引は重要な虚偽表示をもたらす可能性が高い特異な取引に相当する。これらの理由から特別な検討を必要とするリスクが存在すると判断したと考えられる。

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第2問

問題1
問1

(社長の提案の番号)②

(理 由)内部監査業務は、内部統制の構成要素であり、外部監査人が兼任すべきものではない。仮に兼任している場合、外部監査人としての独立性に重大な疑義が生じる。このため利害関係府令第5条第1項の五号においても財務諸表の監査証明業務との兼業が禁止されている。そこで内部監査業務の兼業の提案は解消することとなった。ただし内部監査が不十分であること自体はその企業の統制リスクを高めはするが、ただちに監査契約の障害となるものではない。

(社長の提案の番号)③

(理 由)この条件は、倫理規則第11条第1項で禁止している成功報酬による保証業務の受託にあたるため。このような条件は、監査人の保証業務における独立性に対する重大な脅威になるのみならず、公正不偏の態度をとり難くする可能性もある。そこでこの条件は解消し、監査意見の如何に関わらず一定の報酬を約することとした。監査人は財務諸表に重要な虚偽表示がある場合には、重要性に応じて限定付適正意見や不適正意見を表明しなければならない。

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問題2
問1

(記載事項の番号)(1)

(理 由)財務諸表が適正であるのは、「貴殿の監査を受けている」ことを理由とするものではないため。財務諸表を作成する責任は経営者にあり、その経営者自身の責任において、財務諸表が「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して」いることを宣言するのがこの記載事項の意義であり、監査人に財務諸表作成の責任を依存しているかのごとき誤解を生じさせるような当該記述は不適切である。

問2

経営者確認書の入手は、重要な監査手続に相当する。したがって確認書の提出を拒否した場合には監査範囲の制約となるから、監査人はその重要性に応じて監査意見を限定するか又は意見を表明しないことを検討しなければならない。したがって、監査手続を実施し合理的な基礎を得たことを前提とする不適正意見を視野に入れるべきとの判断は適切ではない。監査人は経営者に対して再度、確認書の提出を求め、それでも提出を拒否した場合には、記載事項は財務諸表監査の前提となる重要な事項であると考えられるため意見を表明してはならない。

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上記解答について

※上記解答は独自に作成されたものであり、「公認会計士・監査審査会」が公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。

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